本題に入る前に、過去の思い出を

■僕らが作った月夜埜綺譚の幸運なところは、テストプレイヤーに、シミュレーションゲーマーからTRPGに入った人からライノベしか知らない人まで、まあなんともいろんな人がいたことだった*1。結果、当初からおしなべてベテランゲーマーには評判よかった*2

■しかし分析するとデザイナー的に面白い内容ではなかった。なにしろ、進行管理から、起承転結などルールの不足を補うことを、ハウスルールやセッション内特殊運用などで当然と為しえてきた人々である。ようするに評判というのは、比較的ルール補完の必要が少なく、ゲーム性が強いためキャラクターの資源管理を考えるのが割と楽しい、同人にしてはそこそこよくできたクラシカルなルール、というわけだ。そしてソードワールドのギャグよりのリプレイを愛読書にしている層からは、不自由、世界がムツカシイ、戦闘が爽快感に欠ける*3、動きにくいとたいへん不評であった。とくにルールのおもしろみが周知されるまでは、ひたすら学生や自由人*4を皆がやりたがるのが、なんとも悔しいのであった。

■月夜埜綺譚の当初からのデザインコンセプトを大まかにまとめると、世界を趣味に走るかわりに、プレイアビリティが高く、女性に受け、そしてなによりプレイヤーが自由に動けるゲームを作ろう、というものだった。とくに「自由」にはこだわりがあった。そもそも悪の組織が“自由から世界を守る秘密結社”である。自由を演出するために、プレイヤーキャラクターがそのゲーム世界で唯一に等しい自由な存在であることをアピールするために、不自由きわまりない日常と、現実に近い暗さを持つ現代世界のカリカチュアを作ったモノだった。

■その後、月夜埜綺譚は2年のテストプレイを経て、4回のメジャーアップデートを経て、今の姿へと変わっていった。元々趣味に走っていることもあり、ついにテストプレイヤー全員に受けるというわけにもいかなかったのだけど、ずいぶんいろいろ改善された。その過程でいくつか強く気になることがあった。それは今までさまざまに語りだしてきたことでもあるのだけど、今回の葛藤にもさまざまにぶち当たったものでした。このあたりから本題にはいる。

*1:他にもプロの絵描きや免許持ってる書道家コミケではそこそこ売れる同人漫画家等がいたのも幸運ではあった。文章書けるのが自分しかいないのは大打撃ではあった…

*2:ちなみに僕は、ゲームブック以降からTRPGに入った層である。

*3:月夜埜綺譚の戦闘: これは今でもあまり改善されてないな(笑)。

*4:月夜埜綺譚においては思い切り周辺的なクラスで、まあこういうのもいちおう入れておく必要もあるんだろうな、という消極的な心づもりでおかれた。