TRPG論考みたいな

月夜埜綺譚ができるまで(ii)

■前回までのあらすじ。 ■TRPGから遠ざかっていた現場作業員Hは、アナログゲームと読書*1を友に暮らしていた。そんなある日、英雄物語のできるTRPGを作れ、という何者からかの天啓を受けたHは、思わず一晩でアウトラインをまとめてしまう。それは、現代日本…

月夜埜綺譚のできるまで(i)

http://d.hatena.ne.jp/gginc/20070901/ http://blog.livedoor.jp/gensoyugi/archives/51053444.html http://d.hatena.ne.jp/accelerator/20070907/p1■このへんを読みつつ、なにか理屈を立てて考えようとしたのだけど、いまいちいいのが思いつかなかったので…

サタスペのこと。あるいはゲームマスターは何をたのしむのか(TRPGと物語(xvi))

■僕もいろんなシステムを解析してきたが、ことシナリオ記法という象限で衝撃を受けたものはあまり多くない。*1ひとつには、明確なシナリオ記法がルール化されているものが少ないのがその原因と思う。シナリオをどう書けばいいのかを考えることすら、オフィシ…

シナリオの種類をもうちょっと分析する(TRPGと物語(xv))

■前回、シナリオの種別についてちょっと書いたのだけど、わかりにくいと反響があったので、もうちょっと体系付けて書いてみることにする。ちなみにこれは、あくまで同人的TRPGシステムを製作する側からの視点であり、プレイしたりシナリオを書いたりする立場…

気づく、ことの話

http://blog.livedoor.jp/lissehwestlambe/archives/50118859.html■リンク先の記事を読みながら、そうだ! そうだぁ! と思いつつ、でもこれはそんなに一般的なとらえ方じゃないのかしら、と恐れつつ、いろいろ考えていました。僕が勝手に“TRPGをめぐる精神…

シナリオには何が書いてあるのか(TRPGと物語(xiv))

■ゲームマスターの権限というのは、深く考えれば考えるほど、なんだかよくわからない。ゲームマスターの入門書をそうたくさん読んだわけでもないのだけど、どこかで読んだのには「ゲームマスターはプレイヤーを楽しませなければならない」とか書いてあって、…

シナリオ記法ってなんだ?(TRPGと物語(xiii))

■シナリオ記法って実に壮大なテーマなんだけど(w なかなかまとまった時間をとれないのでちょっと小分けにしていきます。今回は、TRPGにおいてシナリオ記法ってどういうものだったのかしら、という個人的分析なお話。■かつてダンジョンを探索することがTRPG…

物語やるTRPGのマスタリング支援とは(TRPGと物語(xii))

■以前にも述べたとおり「物語やるTRPG」は、プレイヤーが物語を自覚的に発見していく、ないしは描かれ体験したものを勝手に物語と誤解する、という構造を持ったTRPGである。物語を見つけるためには、切り出すべき世界が必要であり、さらにどの場所を切り出せ…

ゲームマスターというプレイヤーと、システム(TRPGと物語(xi))

■ゲームマスターと呼ばれるプレイヤーが、セッションのためにやらなければならないことは実に多岐にわたる。まずシナリオを用意してこなければならないし、それを他のプレイヤーに描写して聞かせなければならないし、プレイヤーの行為に対してリアクションを…

しきりなおし

■だんだんアクセスが増えてきた…。困ったなあ。まあいいか。皆様アクセスありがとうございます。月夜埜綺譚持っている方、遊んでください、プレイレポート見せてください、あなたのためならコンベンションでも開いて見せます、ってそういうはなしじゃないで…

ネタバレ(w

はじめての劇作―戯曲の書き方レッスン作者: デヴィッドカーター,David Carter,松田弘子出版社/メーカー: 日本劇作家協会発売日: 2003/04メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (2件) を見る■実は、この本を、この“物語やるTRPG論みたいなもの”…

物語やるTRPGの世界、あるいは世界を作ると言うこと・応用編(TRPGと物語(x))

■物語やるTRPGが他のストーリーメディアと違うところは、参加型の度合いが強いということである。それは主人公や様々な役柄を演じるプレイヤーキャラクターを操作すると言うことであり、同時にプレイヤーという立場でそれぞれの世界を俯瞰できる、ということ…

世界を作るということ・初級編(TRPGと物語(ix))

■前回「世界をどう切り出したらオモシロイか、それがほとんどルールである」というようなことを書いた。そのために世界とその切り出し方にはゲームデザインが必要なわけだが、そういった各論的話題の前にもっと大事なことがある。■その世界に愛はあるか? で…

TRPGにおける世界とは(TRPGと物語(viii))

■さてTRPGにおいて、いわゆる“背景世界”(以下、世界)と呼ばれているモノが、具体的なルールへの反映の有無にかかわらず、一種の暗然たるルールとして機能しているのはもはや常識である(…ですよね? ね?(笑))。本稿で扱っている物語やるTRPGにおける世界の…

TRPGの葛藤とは、そして物語やるTRPGの葛藤とは(TRPGと物語(vii))

■アンサーも兼ね、ある程度個人的な考えにもなってしまうのだが、プレイヤーキャラクターに課せられる葛藤は、動きが阻害されない範囲で、あればあるほどいいんじゃないかと思っている。もっとも葛藤をどういうふうに運用するかは、葛藤の質に依ってある程度…

本題に入る前に、過去の思い出を

■僕らが作った月夜埜綺譚の幸運なところは、テストプレイヤーに、シミュレーションゲーマーからTRPGに入った人からライノベしか知らない人まで、まあなんともいろんな人がいたことだった*1。結果、当初からおしなべてベテランゲーマーには評判よかった*2。■…

物語やるシステムで、キャラクターは何でできているのか(TRPGと物語(vi))

■学生時代、漠然と楽しいからってシステムをデザインしていた頃*1、一番面白かったのは、人間が何でできているかを考えることだった*2。今でも楽しくなくもないけど、実のところ、TRPGをデザインする上ではこの思考は複数の意味で誤りである。まず、人間とキ…

始まりと終わり、そして一貫した個性〜ギャルゲーメソッド概論(TRPGと物語(v))

■物語を物語たらしめるには制約がある、そしてそのことをうまいことシステムが代行していくことを考えると面白いかも、という趣旨で続いている当論考みたいな。システムをベースに探っている故に葛藤とリズムをやたら前面に押し出しているが、物語の制約はも…

GMからの要求、PLからの要求、そしてシステム(TRPGと物語(iv))

■言葉を乱暴に使っているのでちょっと整理して、以下は気をつけます。ここでいう「物語」とは、ざっくりした定義で“人が話す嘘話で、誰かにきちんと聞いてもらえる(内容やパッションをある程度共有できる)もの”という感じのニュアンスとします。嘘話という言…

手前みそな月夜埜綺譚の話(TRPGと物語(iii))

■今回は、月夜埜綺譚という僕と浅川河畔スタジオと月夜埜綺譚製作委員会が作り上げたシステムについて語ります。いやん。■いままでの論点をつまらなくまとめたりいろいろなんかするとこんな感じ。 物語が物語であるため(きちんと他人様に読んでもらえる作品…

前説を忘れていた

■そういえば忘れていたので、ここのTRPG論考みたいな文章のコンセプトと方向性を書いておきます。■基本的には学究的に物語やTRPGを分析しきるつもりもありませんし、ある程度の資料的研鑽はするモノの、どちらかといえば今までの曖昧な経験論に依るところが…

TRPG的自分の痛さ(TRPGと物語(ii))

■TRPGなんてキモい連中しかしない趣味なんだよ、なんて言われても、それが本当のことだったとしても役に立つ感じがしない。TRPGをやっている人は傷つきやすい人なんだ、っていわれても、人は傷つきやすいもんだし、TRPGをやっている人がその他の層に比べて有…

物語は自由か(物語とTRPG(i))

■以下はまだ煮詰めていないが、感覚的にはこれしかないっとか思ってる内容である。いずれ資料的研鑽を経て煮詰めるべきであろう。本当はね。■言うまでもなく自由ではないんである。漫画や小説を一度でも完成させ、きちんと人に見せ、感想に耐えたことのある…