「妖怪大戦争」を見た

■「…く、くだらねー(w」

■と、エンドロールが終わった直後につぶやいてしまった僕は負け犬です。かんっぺきに制作者にしてやられちゃった。それは悪くない感じでした。そう。悪くないんだ。

■…ま、まあ、原則的にはまず「狭い映画」です。基本的に水木しげるワールドを舞台にみんなでよってたかって好き勝手やりましょう、ってのりで、水木しげるワールド知らない人はまずここで置いてけぼり。悪く言うなら、セルフパロディ

■それから「内容」ありません。そんなものを期待しちゃダメです。

■えー? 「栗原千明の太もも萌えな映画なんでしょ?」って? はい。そこんとこは正しいです。あと川姫な。属性は“太もも”準拠です。いいですね。

■あと、基本的にはナンセンス映画なんだけど、全般的に「日本映画っぽい中途半端さ」が漂っているのもいかんともしがたいものがあります。…はい。ここまで残っている人、それなりに楽しめるかも知れないです。そうじゃない人、お金の無駄です。

■しかし見終わった後、いっしょに見ていた相方と感想戦やってみると、これがなかなか深いものが見えてくる部分もあって、なかなか一筋縄ではいかないのでした。なんていうかね、骨格だけはすごくしっかりしてるのね。明らかに馬鹿映画なんだが、水木しげる荒俣宏京極夏彦宮部みゆきの超豪華メンツによる悪のりは伊達じゃないと言いますか。

■以下、ネタバレ。


■まあはっきり言って“素材”を十全に生かし切れていた映画とはとても言えません。もっと悪のりを! もっと痛みを! もっと太ももを! と思った(w でも本当に骨格はしっかりしているのです。だから端々に見えるものが、映画の表層にかかわらずけっこう胸につかえたりする。これが。

■あれできちんと“ファンタジー”の構造を持っているのね、簡単に言うと。それが端々に現れる“ルール”としてちゃんと表現されている。あんまり言うと、映画に興味を持った人の気持ちも削いじゃうからちょっとぼかして書きますが、たとえば「どういう人間が妖怪を見ることができるか」、「妖怪を傷つけると言うことはどういうことか」、「人間と妖怪のもっとも本質的な差異は何か」。しかもこういったルールが、主人公の人間的成長ときちんと絡めたものとして描かれる。…メタ視点のギャグで鬼太郎ネタが出たり、つっこみのあまり主人公がいろりに頭をつっこむような映画なのに(w、こういう様々なルールからストーリーも演出も決して逃げないのね。まあ追い切れてるわけでもないんだけど(w

■逆にせりふなんて、ぜーんぜん練られてなさそうだし、ストーリーなんて言葉にしちゃうと陳腐の一言。クライマックスも脱力系。そういうものでしか作品を見られない類の人にとっては、もう口あんぐりの世界でしょうね。実際、そういうお客さんもいました*1

■でも僕の見方も邪道なんだろうけど、「人間が〜だから」なんて妖怪がしゃべる台詞もぜーんぜん心に来ないのに、ふりかえってみると妙に“諷刺されちゃってること”に気づいたりする。これは、あくまで個人的にですが、悪くない感じです。たぶん映画自体はやっぱりダメなんだけど、その背景となるさまざまな世界、水木しげるの世界や、人生、漫画をふくめたもろもろ、が持つ深みの骨太さなのかも知れません。

■不思議な映画です。まあ「く、くだらねー」映画です。でもちょっと立ち止まってみてもいいかな、とも思います。

「なんで妖怪が見えなくなったの?」
「なんでだろーなあ。…大人になったから、かな?」

■劇中に現れる、このやりとりのムコウ側が、もしかしたらテーマだったのかな、なんてね。「大人になったから妖怪が見えない」なんてつまらない答えだと思うなよな? というあたりで感想おしまい。

*1:もちろん彼らは悪くないのよ。なんで映画見るのにドラマツルギーの分析までしなきゃいけないの? っていうほうがよっぽどまっとうだもの。