こうの史代『夕凪の街・桜の国』(双葉社)
- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2004/10/12
- メディア: コミック
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■『こっちも書いておきます。読んでない人はこちらもどうぞ。名作です。』
■と最初に書いてしまったのだけど、今日は8/6でした。8/6にこの本をこんなふうにおざなりに書いちゃいけなかったですね。申し訳ありませんでした。
■この作品は、広島原爆を経験した市井の人々と、その後の生活を、淡々と描いた連作短編です。政治でなく、反戦や非核運動とかともどこか遠く、ひたすらにただの人々にとっての戦争とその後。戦争をある意味でこれ以上なく直接描いた作品だけに、雰囲気は決して明るいものではありません。戦争が何を奪うのか。戦争で人が何を失うのか。それでも人生はすばらしい。けれど。けれど。そんな物語です。
■でも個人的には、この作品を単なる反戦や非核ものとして読むのはできればやめてほしーなーと思う部分があります。もちろんこれ以上もなく反戦です。非核です。でもこの物語はそんなに小さいものじゃなくて、戦争も、核の被害を受けた人も、いっそ核を撃ってしまうような人間まで含めた、広く人間が生きることついての物語、だと思うのです。それが様々な時代の広島を描く美しい風景と、美しいとばかり口にも出せない印象的な背景描写の中に描かれていることに、僕はどうしようもなく言葉を失うのです。
■こんなこと書くと、読む気なくしちゃう人もいるだろうけど、この作品の前ではうまく冷静でいることはできません。ごめんなさい。名作です。あなたも読んでくれると、うれしいです。