造成地を行き来する

 造成地でどっばーと工事をやっている。新しい街ができる、というのとはなんだか違って、廃墟という風でもなくて、やっぱり工事現場という感じ。なにやら僕の街観とは本来異質の何かであるようで、でも今の人がすむ街はこんな風にできているのである。そんな人々の安定とか帰る(買える?)家とかしあわせな家庭とか人生の到達点とか、そんな夢がいっぱい詰まった場所、らしい。
 個人的に造成地が一番綺麗だと思うのは、家にいくらかすみ始めて街灯がぽつぽつとつき始めたころ。そこは“住宅地”以前のなにかと、その後の住宅地の狭間にある妙な空間である。まだ未完成の電柱が立ち並ぶ中で、みょーに扁平な空を見上げることは、造成地を歩くひとつの醍醐味である。新規の造成地につきものの雨水調整池があればもう完璧。
 もっともそこに美しさだなんだを見つけようとする人は少ないだろうけどね。せいぜい活気があるとかそれくらい。(それはまた素敵だけど。)現場の猥雑な喧騒に惹かれるか、自然破壊だなんだに眉をひそめるか、ってたいていの人は興味もない。