初台をうろつく

 しかし水路ばかり見ていて、初台の町をろくすっぽ見ていないことにふと気づいたのは、東京オペラシティビルの反対側をぼんやり眺めたとき。古ぼけた映画のポスターがはってある鯛焼き屋さんと看板建築(※1)。よくよくみればそこは昭和の遺産「商店街」がひろがっていたのだった。

 昨今昭和ブームとの事だけれど、いつもいつもブームというのは時代遅れで、めぼしいものがずいぶん消えた今ブームになってどーすん?(どうするというの? を意味する岡山弁)という感じではあるが、いやいやまだまだ西新宿周辺は侮れない。灯台下暗し、バブルが激しすぎてあまり土地も動かなかったこのあたりには、なんだか昭和がいっぱい残っているのだった。……ってこれは割と有名な話なのだけど、あらためてみるとなんだかみょーな気分になってしまったのだ。

 坂道。街道。坂道。鉄道。歴史。もっとぶっちゃけて、人の流れか。空の上に首都高速が走る前の空間を、なんとなーく忍ばせる空気がある。それはノスタルジーというよりは断絶で、たぶん観光化したらダメになる微妙な雰囲気で、ついでにいうとすんでいる人には必ずしも快適じゃないかもしれない何かである。夜、多くの店が閉店してから通り過ぎた僕と波長があうなんて、なにやら町に申し訳ない気もしたのだけれど。